
• WHAT IS AN ELEGANCE
2025.10.02
MADISONBLUE デザイナー/ディレクター
中山まりこさん【2/3 章】
「エレガンスの本質をまとう、トラッドの進化」
Text: MIKI SUKA, Photo: SHIN JINUSHI
1980 年代からスタイリストとして活躍を続け、2014 年に自身のブランド「MADISONBLUE(マディソンブルー)」を立ち上げた中山まりこさん。掲げたコンセプトは、“ハイ・カジュアル”。経験を重ねた今だからこそたどり着いた、“長く愛される服” へのまなざしがそこにある。流行に流されず、自分の感性に正直に。
そんな彼女が考えるエレガンスとは? ファッションと生き方、そのあいだにあるものを今あらためて紐解きます。

時代を超えて愛されるブレザー、
“ブリーカー”。
もう一つのコラボレーションアイテムは、「マディソンブルー」のアイコンともいえるネイビーのブレザー、“ブリーカー”。その名の由来はNY のブリーカー・ストリート。クラシックなテーラード仕立てに、日常にも溶け込むモダンなラインを加えたデザインは、10 年以上にわたって変わらぬ人気を誇ってきた。
「“ブリーカー”は、ブランド創設時からエッセンシャルな存在として大切にしてきました。レディースのジャケットは、ふわっとしたラインが多いんです。私は元々トラッドが大好きで、芯の入ったしっかりとしたテーラードを女性が着る姿に憧れていて。スタイリスト時代もメンズライクなジャケットの大きなポケットに、ウォーターボトルやバナナを入れて現場に行っていましたから(笑)」
トラッドへの敬意と、女性らしさの再解釈。その両方をバランスよく体現したこのジャケットは、たっぷりと深さのある実用的なポケットが特徴のひとつだ。「マルティニーク」との初コラボでは、アイコニックなレッドの裏地はそのままに、ポケットのフラップ下に“BONJOUR” という刺繍を添えた特別仕様に。ポケットに手を入れたときちらりと見えるその文字に、さりげない遊び心と自分だけの“秘密” のような高揚感が宿る。カレッジ風のオリジナルの金ボタンは、今の空気に合わせてシルバーにアップデート。トラッドなムードはそのままに、ドレスやワンピースにさらりと重ねれば、ハンサムと華やかさのバランスが生まれる。
かちっとした仕立てを、あえてラフにまとう。そのスタイルはまさに、中山さんが日常で実践する、媚びないエレガンスの象徴。パリの女性たちにとってブレザーが日常着であるように、中山さんが魅かれる“ユーモアと、一歩引いた謙虚さ” もまた、このジャケットにそっと投影されているようだ。静かに、けれど確かに、控えめで上質なエレガンスが、袖口からふわりと漂ってくる。


相反する要素を同居させて「エレガンス」が生まれる。
中山さんが服作りで意識しているのは、ひとつのアイテムの中に異なる要素を同居させること。着る人やシチュエーションによって印象が大きく変わる、その“余白” こそが、「マディソンブルー」の魅力でもあり、年齢や時代を越えて愛される理由でもある。
「ラフに見えてどこかきちんとしている。メンズライクなのに女性らしい。そんな相反する魅力が、自然と混ざっているものに惹かれます」
ブランドが長年大切にしてきた“ハイ・カジュアル” という考え方の中にある、マニッシュとエレガント。異なるもの同士の調和とその絶妙なさじ加減が「マディソンブルー」らしさなのかもしれない。
「ラフに見えてどこかきちんとしている。メンズライクなのに女性らしい。そんな相反する魅力が、自然と混ざっているものに惹かれます」
ブランドが長年大切にしてきた“ハイ・カジュアル” という考え方の中にある、マニッシュとエレガント。異なるもの同士の調和とその絶妙なさじ加減が「マディソンブルー」らしさなのかもしれない。

「エレガンス」は、大人になって出合うもの。
思い返せば、ファッションを好きになったきっかけは60 年代の映画やカルチャーから。大統領夫人ジャクリーン・ケネディやアリ・マッグローといった女優は、当時の中山さんにとってまさにファッションアイコンだった。
「いつも真似していましたね。かっこいい女優達がまとう大きなサングラスやタートルネックとか、当時の私は60年代のムードに憧れていたんです」
けれど年齢を重ねた今、新たに出合ったのがパリのマダムたちのような“静かなエレガンス”。パリという街が持つ美意識と重なり、彼女のスタイルに新しい深みを与えてくれた。
「いつも真似していましたね。かっこいい女優達がまとう大きなサングラスやタートルネックとか、当時の私は60年代のムードに憧れていたんです」
けれど年齢を重ねた今、新たに出合ったのがパリのマダムたちのような“静かなエレガンス”。パリという街が持つ美意識と重なり、彼女のスタイルに新しい深みを与えてくれた。

MADISONBLUE デザイナー/ディレクター
中山まりこ
1964年生まれ。1980年代よりスタイリストとして活動。1980年代後半、ニューヨーク在住時に雑誌『Interview Magazine』等でスタイリスト活動・ 雑誌のコーディネーターの他、NOKKO全米デビューのディレクターとして活躍。1993年に帰国し、広告・雑誌・音楽のスタイリングをメインに活動。2014年、自身のブランド「MADISOBLUE(マディソンブルー)を、6型のシャツからスタートさせた。