• NOTE FROM PARIS
2025.10.29
VOL.01
コルビュジェ建築の住宅「ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸」を訪ねて
Text: CHIE.M (martinique buyer)
バイイングでのパリ滞在中、少し時間ができた際は美術館へ行ったり、何か芸術に触れるようにしていますが、中でも私は建築を見に行くことが好きです。頭の中が情報やタスクで溢れているとき、その空間に身を置くことで不思議と整理される気がします。今回はとても素敵だったパリ16区にあるラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸をご紹介します。

住宅という温もり
入口を入ると大きな吹き抜けがあり、陽の光が降り注ぐ開放感のある空間です。その意図があったのか、入口でまず心の緊張をほどいてくれるところが、やはり「住宅」建築なのかなと感じます。線と曲線が交錯し、備え付く家具もとてもモダンなのですが、ところどころに「生活の場所」という温もりを感じ、とても穏やかな気持ちになりました。

部屋ごとに違う色
外壁は柔らかな白、屋内も白を基調としながらも、部屋ごとにピンク、黄色、焦茶と壁や床の色が異なっていて、色彩に富んでいます。飾られるアートとの調和もあり、部屋ごとに違う雰囲気が心地よい。中でも印象的だったのがダイニングルームで、大きな窓と最も色彩豊かな部屋での食事時間は素敵なひとときであっただろうなと、また心が温まりました。

キャプション:この邸宅は1923~25年にかけて建設され、コルビュジェが提唱する「新しい建築の五原則(ピロティ・屋上庭園・自由な平面・水平連続窓・自由な立面構成)」の萌芽を示す重要な住宅の一つです。現在は一般公開されており、彼の理念を“生活空間”として体感できる貴重な場所になっています。
偉大な建築家の建築物でありながら、「住宅」であるので、生活の形跡を感じることができ、穏やかな気持ちになることができました。そして頭の中は自然にリセット、整理され、家族のことも少し思い出しながら帰路につく、パリ滞在の最終日に訪れて本当に良かったと思える体験となりました。