• A BETTER WAY
2025.12.26
VOL.04 前編
漢方とアロマ、
じつは相性がいいんです
text: SHIORI FUJII
寝ても疲れが取れない、なんとなくずっとだるいーー。現代は、そんな不調を抱えていない人のほうが、むしろ少ないかもしれません。だからか、病気になる前の段階で、体調を整えるために、漢方やアロマを取り入れる人が増えています。
そこで今回は、漢方薬局を営む杉本格朗さんと、アロマセラピストの加藤広美さんに、心と体を整えるためのヒントを教えていただきました。一年の疲れが押し寄せるこの時期こそ、自分の体や心と向き合ってみませんか。
そこで今回は、漢方薬局を営む杉本格朗さんと、アロマセラピストの加藤広美さんに、心と体を整えるためのヒントを教えていただきました。一年の疲れが押し寄せるこの時期こそ、自分の体や心と向き合ってみませんか。

漢方家
杉本格朗

セラピスト
加藤広美


加藤
「アロマセラピーは植物由来の芳香成分を用いる療法で、ヨーロッパの一部の国々では補完・代替医療の一環として用いられています。
私は精油療法士として、主に対面でのパーソナルブレンディングを行っていますが、お客さまからは、集中力を高めたい、滋養を与えたい、自分の機嫌をとりたい、など相談はさまざまですね。冷え性などの不調を漢方で改善して、そこから植物療法に興味を持って、アロマテラピーのケアを、という方もいらっしゃいます。その流れで杉本さんのお名前をうかがったりしていました」
私は精油療法士として、主に対面でのパーソナルブレンディングを行っていますが、お客さまからは、集中力を高めたい、滋養を与えたい、自分の機嫌をとりたい、など相談はさまざまですね。冷え性などの不調を漢方で改善して、そこから植物療法に興味を持って、アロマテラピーのケアを、という方もいらっしゃいます。その流れで杉本さんのお名前をうかがったりしていました」
杉本
「そうなんですね。加藤さんのプロフィールを拝見したらアパレル出身とあったのですが、僕もテキスタイルを学んでいたので、そういう共通項もあるなと思っていました。僕は染めものをやっていたんですが、染料と漢方は同じ材料があったりします。衣服は体を外側から守り、漢方は内側から守る、というふうにとらえているんですが、古の時代には、具合いが悪くなったらアクセサリーや染料で魔除けをしていたことを考えると、近いところがあるのかもと」
加藤
「確かに、お洋服の持っているエネルギーってありますよね。纏う、装うというだけでなく、体を休めるとか、肌触りで安心をもたらすとか」
杉本
「僕たちのお客さまに共通点があるとしたら、ケミカルをなるべく避けたい、というところでしょうか。タブレットやカプセルの薬って便利なんだけど、味わいや香りが感じられる漢方薬のほうが効果的なこともある。香りが鼻から体内に入っていくと考えると、香りを内服しているとも言えますよね。香りには癒し以上の“効能”という面もあるんだと思います」
加藤
「そうなんです。香りには鼻だけではなく、口、経皮からも吸収されるので、生理的な影響も大きいです。カジュアルに取り入れやすいと思われがちですが、体調や体質によっては禁忌となる精油もあります。私はまずカルテをとり、一人一人のお話をうかがいながら一緒にブレンドを組み立てていくという手段をとっています。天然のもの、植物由来のものが体にやさしい、というわけではないんですよね」

杉本
「植物には毒性があるものも多くて、正しく使えば薬だけど、間違えば命を失うというものだってあるしね。漢方薬も同じで、誰かに効いたからあなたもどうぞ、というわけにはいかない。体も環境もみんな違うからね。本来の選び方ができていないまま、効かない、合わない、と諦めてしまうのはもったいない」
加藤
「漢方のほうが香りよりダイレクトかもしれませんね。内服薬を煎じて煮出して濃縮したものを直接、胃から吸収させるわけですよね。その分、即効性も期待されそう」
杉本
「即効性ということでは、最近発症した症状であれば比較的すぐに治ることが多く、長く悩んでいる症状を解決するには時間がかかります。本人との相性もありますね」
加藤
「急性と蓄積で対処が違うのは、アロマセラピーも同じですね。例えば、『気管支の炎症で粘膜に痰がある』というときは即効性のある精油の蒸気吸入を勧めるけれど、婦人系疾患のような慢性症には、時間をかけて見ていきましょうとなる。本人に合っていると改善が早いというのも同じです。症状は同じでも、その方の体質や気質に応じて提案する精油は変わります」
杉本
「漢方には、同病異治、異病同治という言葉があります。同じ病気で異なる治療法をしたり、違う病気でも根本の原因によっては同じ薬で治ったりするということですね」
加藤
「同じですね。痛いと感じている所に届く香りもあれば、痛みを発してるのが患部ではないときは体全体の鎮静に働きかけることもある」
杉本
「漢方薬ってやっぱり苦い、まずい、が先行するんですが、どうしても合わなかったら処方を変えることもあります」

加藤
「私も、苦手な香りだと感じるときは、やっぱり理由があるのかなと考えますね」
杉本
「漢方薬局もアロマセラピストも、どう選べばいいのかという課題も、似ているかもしれません。病院はたくさんあるけれど、きちんと話を聞いて、一人一人に自然療法を併用できるようなところが、日本にはまだ少ないんですよね」
加藤
「話を聞くことは大切ですね。私はカウンセリングで、お客さまのライフスタイルをひと通りうかがっています。たいていの不調は、原因が一つではなく複合的。だから血圧、むくみ、冷え、胃腸の状態などいろいろな角度からお話しを聞くんです」
杉本
「“傾聴” ですね。漢方はそのうえで脈や舌も診て、目の色やくまの様子なども確認する。とにかく情報はいっぱい欲しいんです。そこから肺、心臓、消化器、腎臓などそれぞれの気と血と水のバランスをみていきます。
ときには人生相談を受けることもある(笑)。家族とも友達ともつながっていない、ただ話を聞いてもらう人がいるって、けっこう大事なんですよ」
ときには人生相談を受けることもある(笑)。家族とも友達ともつながっていない、ただ話を聞いてもらう人がいるって、けっこう大事なんですよ」
加藤
「私は医療者ではないから診断や処方をするわけではないけれど、お話を聞きながら、悩みをかるくするにはどこからアプローチしていきましょうか、と一緒に考えていますね。
話をしているうちに、そういえばこういう症状もあるなって自分で気づかれる人も多いんです」
話をしているうちに、そういえばこういう症状もあるなって自分で気づかれる人も多いんです」


杉本
「漢方とアロマセラピーの違いで言うと、漢方薬には固いものを使うことが多いんです。種子や根っこ、木の皮などを煮出して使うことが多い。アロマセラピーは葉や花びらを使うイメージです。
でも例えばハッカの有効な成分であるメントールだけを取り出して使うよりも、雑味があるほうがいい、という考え方は同じな気がします」
でも例えばハッカの有効な成分であるメントールだけを取り出して使うよりも、雑味があるほうがいい、という考え方は同じな気がします」
加藤
「土の中と地上、どちらか多いかの違いはあるかもしれません。葉の匂いは深呼吸したくなるし、花の匂いは一瞬で気持ちを高揚させてくれるところもある。だから漢方薬で治療しながら、気持ちを安定させるのにアロマを使うといいなと思います」
杉本
「漢方薬って内服する量が決まっているんですよね。朝昼晩の3 回に飲むものであれば、辛いからといって何回も飲んでいいわけじゃない。だから、精神的なストレスを抱えていたり、眠れないというときは、アロマでリフレッシュできたらすごくいいですよね。悩みって一つだけじゃないし、心と体はつながっているから」
加藤
「そうですね、漢方薬は飲んでいるけれど、不安でくよくよしてしまう、というときは、アロマで気を散らすことができたらいいと思います。甘いものを食べるとか、音楽を聴くとかと同じように、コーピング(ストレスに対処するために行う行動や思考のプロセス)のひとつになりますよね」
杉本
「日本は保険診療制度がちゃんとしているから、“まず病院” が良くも悪くも当たり前になってしまっているんですね。でも本当は、健康を維持するために、食事や睡眠、運動、アロマ、鍼灸、漢方、マッサージなど、さまざまな選択肢がある。
誰だって痛いのは辛いし、外科的手術も必要なときがあるから、現代医療がだめってわけじゃない。救急の症状でなければ、まず漢方やアロマなどを試してみて、それでもだめなら、病院、合成医薬品、を検討するんでもいいんじゃないかな」
誰だって痛いのは辛いし、外科的手術も必要なときがあるから、現代医療がだめってわけじゃない。救急の症状でなければ、まず漢方やアロマなどを試してみて、それでもだめなら、病院、合成医薬品、を検討するんでもいいんじゃないかな」
加藤
「併用してもらえたらうれしいですよね。漢方と現代医療をバランスよく取り入れながら、そのサポートとしてアロマセラピーを活用してくれたらいいなと思います」

漢方杉本薬局代表/漢方家
杉本格朗
1982年生まれ。1950年創業の漢方杉本薬局代表。漢方家。大学では染色や現代美術を学び、2008年に実家の漢方杉本薬局に入社。2021年に神宮前のGYRE4Fにあるeatrip soil内に出張相談所「杉本漢方堂 Soil」を設立。日頃の体調不良から、慢性疾患、難治性疾患まで幅広く相談を受ける。また、漢方の長い伝統と奥深さに触れ、生薬の薬効、色、香りの研究や、漢方の視点から世界の文化を考察し、暮らしを豊かにする活動をライフワークとしている。「漢方を文化に」と「手しごとの医療」を理念に、坂本龍一氏主宰のイベント「健康音楽」、逗子海岸映画祭、JAPAN HOUSE、The Japan Foundationなど、講演、ワークショップ、インスタレーションなど、国内外で幅広く活動している。
漢方監修:G20大阪サミット「配偶者プログラム」、温泉宿「SOKI ATAMI」 など
著書:「鎌倉・大船の老舗薬局が教える こころ漢方」(山と溪谷社)
HP : https://sugimoto-ph.com/
Instagram : @sugimoto.ph @sugimoto.ph_soil
漢方監修:G20大阪サミット「配偶者プログラム」、温泉宿「SOKI ATAMI」 など
著書:「鎌倉・大船の老舗薬局が教える こころ漢方」(山と溪谷社)
HP : https://sugimoto-ph.com/
Instagram : @sugimoto.ph @sugimoto.ph_soil

セラピスト
加藤広美
「THENN AROMATHERAPY」主宰。アタッシェ・ドゥ・プレスを経て、家族の闘病をきっかけに補完療法を志し、2019年に英国IFA(国際アロマセラピスト連盟)のディプロマを取得。精油を用いた健康の維持、促進に特化した国内では数少ないPEOT(プロフェッショナルエッセンシャルオイルセラピー)セラピストとして、対面でのパーソナルブレンディングを中心に、ワークショップ開催や企業プロダクトの香りの監修、香りによる空間演出などを行う。