「五感を刺激する、水辺への旅に惹かれて」

• INTERVIEW for JOURNEY

2025.11.13

VOL.03
COGTHEBIGSMOKE ファウンダー
Noriko Imaeda さん

「五感を刺激する、水辺への旅に惹かれて」

Text: MIKI SUKA

旅は人を強くする。学生時代から旅することで身につけてきた度胸と、広く豊かな視野を持って生きるNorikoさん。ファッションブランドCOGTHEBIGSMOKE(コグ・ザ・ビッグスモーク)には旅を通じて培われた揺るぎない価値観が息づいている。今の彼女にとって旅とは、癒しと充電の時間。水辺で過ごす静かなひとときが、心の深くにある“生きる核”を育んでくれる。穏やかさの中に強さを見出す、Norikoさんの旅とは。
Q. 住まいのあるロンドンから、 よく出かける旅先はどこですか?
毎年、ルーティーンのように決まっていく場所があります。スペインのアンダルシア地方、コスタ・デル・ソルです。仲のいい友人がサマーハウスを持っていて、夏のはじめか終わりの心地いい時期に2週間ほど決まって訪れています。サボテンが並ぶような場所でのコレクションの撮影も、この地で行っています。ロンドンから2時間ほどで行けるというのも、魅力です。
Q. スペインでは、どんな過ごし方をされているのですか?
プールで1日ゆっくりしています。スペインの夏は日差しが強いので、屋外で日焼けをしたり、のんびりしたりしようと思ったら、早朝からだいたい11時ぐらいか、夕方の16時以降かという感じなんです。日中は火傷をしそうな暑さなので、現地の人はみんな“シエスタ”をするんですね。仕事に出ている人も、昼は家に戻ってご飯食べたりお酒を飲んだりしてゆっくりしています。だから私もそれにならって、出歩くのは夕方くらいで、毎日プールでのんびりしているという感じです。
 
Q.コスタ・デル・ソルの魅力は、 なんですか?
この地域は、キリスト教とイスラム教、そしてユダヤ教の3つ宗教が混ざりあって成り立っています。イスラム建築の要塞や古い闘牛場など、建物にもよく現れていて、ミックスされた異国情緒を感じられるのが魅力だと思います。ピカソの出身地でもあるマラガや、ロンダという町も素敵ですし、美術館や建築などの文化的要素も、食べ物やお買い物も、全部楽しい場所です。
Q.いつも行くお気に入りのお店は ありますか?
「La Fabrica de Hielo」という、「氷の倉庫」という意味のインテリアショップへ必ず行きます。かつて氷を保管する倉庫だった建物がそのままショップになっているんですが、そこがもう超絶素敵なんです! 雨の少ないスペインならではのガーデンファニチャーが揃っていて、屋外に置く2メートル近い壺や古いドアなどがあったり。ほぼアンティークなんですけど、見応えがあります。 レストランは、ベナアビスという街によく出かけます。ベアナビスは、スペインのガストロノミックセンターとも呼ばれていて、アンダルシア地方のレストランが、小さなビレッジにぎゅっと集まっているんです。細い通りの両側にずらっとレストランが並んでいて、夜は車の通行が禁止になり、道にもテーブルが並べられるので、通りの全部がレストランに。いつも行くレストランでは、皮をパリパリに焼いた子豚のローストやイベリコ豚のステーキがお気に入りです。
La Fabrica de Hielo
Benahavis
Q. 他に思い出に残っている、 旅先はどこですか?
私はやっぱり海が好きなのかなと思うんですけど、カプリ島はすごく思い出に残っています。昔、ヴィンテージ品の買い付けにイタリアによく出かけたのですが、ミラノやジェノバのような王道な場所ではなく、ナポリに手付かずの倉庫があるからと向かったんです。倉庫を見終わってしまったら、やることがないのでナポリで一人、何の予備知識を持たずにプラプラ歩いてたら港があって。船が停泊していて、「お金払えば乗れるよ」っていうので、乗ってみたんです。乗船した後、「これってどこ行くんですか?」と聞いたら、カプリ島だと。
 
Q. 偶然、カプリ島に行ったと いうことですか?
そうなんです。船が沖に出たら、今度は小さな渡し船が来て、乗客たちの一部が船頭さんにお金を渡して乗り移っているんですよ。「ここで何するの?」と聞いたら、「アズールグロットだよ」って言うんです。なんのことだか分からなかったんですが、面白そうだから私も行ってみよう、と思って私も小舟に乗ったんです。そしたら連れて行かれた場所は「青の洞窟」だった! こちらはまったく予期もせずでしたが、天候や潮の満ち引きの条件が揃わないと入れない洞窟なので、すごくラッキーでした。そんな偶然が楽しくて、カプリ島に着いた後も、スクーターを借りて行き当たりばったり島を回りました。断崖絶壁にあるレストランに飛び込んで食べた魚料理は、海で網にかかった小魚やタコ、貝を全部ひとつの鍋で蒸し煮にしたアクアパッツァで、忘れられない美味しさでした。一人バイクで乗り付けた私のことを見て、周りの人は不思議に思ったでしょうが、私にはそういう旅が非常に楽しかったんです。
Q.Norikoさんの旅のスタイルは、 そんなふうに何も決めずに行くことが多いのですか?
私の父が、そういう人でした。旅行っていってもプランは立てずに、車で高速で降りたら、ちょっと楽しそうな道の方に行こうみたいな人だったんです。そうやって車であてもなく走って、楽しそうなところが見つかったら、私が駅の宿泊紹介所に走って行って、「この辺に何かありますか?」って聞くという。子どもの頃は、旅といえばそんなのばっかりだったんです。でもそうすると、全然知らない田舎町に辿り着く。そこではたまたま町の花火大会や、盆踊り、歌謡ショーなんかに巡り会ったりして。私も、プランを立てないからこその偶然の出会いが本当に好きになりました。
Q. もう一つ、忘れられない旅を 教えてください。
オーストラリアです。元パートナーがオーストラリア人で、一緒にイギリスに移住したんですが、ヨットだけはオーストラリアにそのまま持っていたんですね。だから、オーストラリアへの旅はいつもヨットに滞在するスタイルでした。ブリスベンからシドニーあたりまで船に乗って移動するんですが、ところどころ、沖に停泊して小さなボートで陸を目指すんです。食材などを買いに行くんですが、偶然素敵な街に出会ったりして、この時も行き当たりばったりで旅していました。船の冷蔵庫には鍵がついているんですが、それは船体が激しく傾くからなんです。一度も車で酔ったことのない私が、その時に初めて船酔いを味わいました。
Q. 船旅では、どんなファッションをされているのですか?
ほとんど、短パンにTシャツみたいな感じで、いつでもそのまま水に飛び込めるような格好ですね。1週間くらい靴も履かない、裸足の生活を楽しんでいます。ある意味、ファッションとは無縁の世界にいるかもしれないです(笑)。
My necessities
Q. 旅先に必ず持って行くものは何ですか。
  • 【ボディオイル】
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    【ボディオイル】

    肌を出すことが多いので乾燥をしないように、旅先ではオイルが重宝します。今はグリッターが入った、ロールオンタイプのものを使っています。

  • 【バブーシュ】
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    【バブーシュ】

    COGTHEBIGSMOKEでも販売していたモロッコ製のバブーシュは、履き心地もいいしかさばらないので旅行にぴったりです。宿泊先の部屋で活躍します。

  • 【ミニバッグ】
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    【ミニバッグ】

    パスポート、携帯、お金が入るミニバッグは、旅を軽やかな気持ちにさせてくれるCOGTHEBIGSMOKEの名品です。私はさらにサングラスケースつけていますが、必要なものをアタッチできる楽しさも。

Q. COGTHEBIGSMOKEのブランドコンセプトにも、「旅」と言うキーワードは欠かせないのですよね?
そうですね。バイヤー時代、世界を旅しながら、ああだったらいいのにこうだったらいいのにということをブランドの中でほぼ実現してる感じです。移動中の機内でも楽ちんで、目的地に着いたらそのまま仕事にも行けて、夜はアクセサリーつければレストランにも行ける……、そういう服が欲しいなと思っていました。畳んでもシワにならなくて、旅先で洗うこともできるメンテナンスもストレスフリーなもの、そういうコンセプトで生まれたんです。
Q. 旅の相棒として、クマのぬいぐるみを連れていって写真を撮られていますね?
子どもの頃、父親が仕事先のビンゴ大会の景品として持ち帰ったクマのぬいぐるみなんです。大きさといい可愛らしさといい、すっかりツボにハマってしまって。それからずっと大切にしています。コグは、ブランド名の由来にもなっていて、いつも旅先にも連れて行っているんです。
Q. Norikoさんにとって「旅すること」は、どのような意味がありますか?
旅することは、人生で本当に必要だと思います。旅の最中にいろんなものを吸収することで、考え方も広がるし度胸がつきますよね。私は高校時代に留学をしたんですけど、楽観的な性格に加えてものすごい度胸がついたと思うんです。1年経った留学の終わりに、迎えに来た父と一緒にアメリカを車で旅したんですが、途中でその車が壊れてしまって。私がレンタカー会社と電話で言い合う姿を横目で見ていた父が「のりちゃんはアメリカ人になったんだね」ってポツンと言ったのが忘れられません(笑)。 旅は、人を強くさせると思うんです。それは、自分で判断し自分なりの主張ができるようになることでもあります。生きていく上で重要な部分ですよね。英語に「well traveled」という言葉があって、「人生を達観している」という意味を持っています。小さな世界で小さく生きている人ではなくて、大胆に生きる人のことを、well traveledな人だと言うんです。私はこの言葉をすごく大事にしていて、ブランドも「well traveled women」に向けて発信できたらと思っています。
Q. マルティニークのアイテムで旅先に持っていくとしたら、何を選びますか?
【カーディガン】さらっと羽織れるカーディガンにもなるし、ストールにもなる万能アイテムです。
 
【セットアップ】 COGTHEBIGSMOKE x martiniqueのコラボデーションのセットアップは、着心地がよくて、旅先でもさまざまなシチューエーションで活躍しそうなアイテムです。
Noriko Imaeda

COGTHEBIGSMOKE ファウンダー

Noriko Imaeda

日本生まれ。16歳で単身渡航し、17歳でアメリカの高校へ留学。世界を舞台に感性を磨く。ロンドンで老舗ブランドのデザインに携わった後、2019年に「COGTHEBIGSMOKE」 を設立。自らパターンを引き、ジャージ素材をエレガントに昇華させ日常を豊かにする服を生み出している。

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