モノづくり図鑑
モノづくり図鑑
THIRD MAGAZINE
ホワイトローズ別注アンブレラ
いつも手に取ってしまう傘。忘れたらすぐに気がつく傘。
誰かに贈りたくなる傘。職人の手で修理できる一生涯の傘。
この先の雨が楽しくなる、美しくて奥深い別注傘の物語。

「モノ作り図鑑」って?

PROLOGUE
創業から50年、その服を装ったときの胸の高鳴りを大切に、
デザインと着心地、上質さが共存する“モノ作り”を
目指してきたメルローズ。
「モノ作り図鑑」は、そのモノを手にする方と
“ファッションへの愛”で繋がることができますよう、
モノが生まれるまでのストーリーをお伝えしながら、
想いを込めた逸品をショウケースする連載。
第2回目は「THIRD MAGAZINE(サードマガジン)」より、
1721年創業の老舗と作る「空から降ってくるものから
お守りする道具」をご紹介。

モノ作りを語る人

モノ作りを語る人
中山彩子(なかやま さいこ)
サードマガジン クリエイティブディレクター

ファッションブランドのPR、バイヤーを経て、2018年ショールーミング型セレクトショップ「THIRD MAGAZINE (サードマガジン)」をスタート。6歳の娘をもつ母親の一面も。独自性の高い雑貨を扱いたいと考えていたローンチ時、ホワイトローズの傘の素晴らしさに着目し、ヒット商品となる別注傘を生み出す。

須藤 宰(すどう つかさ)
ホワイトローズ株式会社代表取締役社長

1955年、東京都台東区出身。中央大学卒業後、スポーツ関連企業のロサンゼルス駐在員を経て、1983年にホワイトローズ株式会社に入社。世界に先駆けビニール傘を開発した父の仕事を引き継ぎ、10代目社長として35年間、国内生産にこだわり、孤高に機能性ビニール傘の進化を追い求め現在に至る。

300本待ちの名品傘ができるまで

Q1. WHITE ROSEの傘はどんな傘ですか?

須藤:玄関を出てお戻りになるまで、「空から降ってくるものから人間をお守りする道具」と考えて傘を作っています。皆さんの傘立ての中には十分な本数の傘が入っておられるはずですが、それでもいつも手に取ってしまう傘。天然木の柄に愛着が湧いて、どこかに忘れたらすぐ気がついて取りに戻る傘。これを持って安心してお出かけくださいねと、誰かに贈りたくなる傘。エコの観点ではなく愛情があるから、傘が捨てられるのは見ていられない。職人の手で直せない傘は始めから作りません。どうやって直すか?を最初から考えて作っているのがホワイトローズの傘なんです。それから僕はロマンチストですから、相合傘ができない傘も作りませんね(笑)

中山:わたしももう何本、ホワイトローズの傘をギフトしたことか。修理も何度もお願いしています。コンビニエンスストアの前に折れたビニール傘がたくさん捨ててあるのを見て、昔は「ビニール傘なんてそんなもの」と思っていましたが、ホワイトローズの傘に出会って概念が変わりました。風が強い日も安心して出かけられて、雨の日が楽しくなる。お客さまからも「雨の日にワクワクするようになった」というお声がよく寄せられるんです。ギフトした方々にも年齢、性別問わずすごく喜んでもらえて。マイ傘として、愛着を持てるのがホワイトローズの傘だと思っています。

須藤:風雨の日、盾にした傘にしがみついて風と戦っている方がおられますが、傘は本来、風と挑戦せず受け流すもの。ホワイトローズの傘には「逆支弁」という穴が8か所開いていて、水は通さず、受けた風だけを傘の表面に沿って流す。内側に溜まった風も逃げ場を探して、逆支弁から外に抜けていくんです。骨はたわむことがあっても折れてはいけませんから、うちでは、強くしなやかなグラスファイバーやカーボン樹脂の骨を使って、傘が反り返らない造りにしています。傘は主人あってのもの。主人をお守りするために、形を保とうと一生懸命頑張る傘なんです。お客さまにはいつも、ホワイトローズの傘が壊れるような日は外に出ない方がいい、とお伝えしています(笑)

300本待ちの名品傘ができるまで
Q2. 300本待ちとなったTHIRD MAGAZINEの別注傘は、どのようにして生まれたのですか?

中山:THIRD MAGAZINEを立ち上げた2018年、スタートからスペシャル感のある雑貨を扱いたいと考えていたときにお声がけしました。実は別注をお願いする前から、ホワイトローズの傘をずっと愛用していたんです。最初に惹かれたのは、佇まいの美しさ。雨の日、傘をさしてウインドウに映っている自分を見るとサマになっていて気分が上がるのですが、使ってみると実力も素晴らしい。まったく面識がないのに無理やりアポを取り突撃!社長との出会いです(笑)

須藤:使い捨てが主流になったビニール傘は、コストが安く大量生産できる中国に市場が移ってしまって、今ではホワイトローズが唯一の国内メーカー。けれども、日本で最初のビニール傘メーカーでもある私たちは、ビニールが強い素材であることを熟知しています。ビニール傘が捨てられるのは、帆が破れたからではなく骨が壊れたから。ビニールの強度に耐えうる丈夫な骨を使えば、修理をしながら使える一生物の傘になります。商品はあっという間にコピーされますから、模倣ができない面倒で手の込んだ作り方をして、機能性を兼ね備えた「高級ビニール傘」という独自の分野を確立しました。例えば、傘の帆と骨をつなぐ露先というパーツも、一つを固定するのに19回、手作業で縫い付けます。職人が手間暇をかけて作る傘ですから量産ができないし、作り手としてのストーリーや機能性も一緒にお伝えしながら売りたい。国産パーツの確保が厳しくなるなかで、アレンジのリクエストに応えることも難しく、委託生産はすべてお断りしていた時期ですね。

中山:私が伺った時も最初は難色を示されていらっしゃいましたよね。でも「新しいショールーミング型の販売形態」「ただ服を売るだけでなく新鮮なスタイルを提案する新しい形のセレクトショップ」というサードのあり方に少しづつ興味を持ってくださって、「面白そうなことは僕も好きだから、やってみようかな」と仰ってくださったんです。別注傘の生産が決まってからも、次は持ち手をTHIRD MAGAZINEらしく華奢でエレガントなものにしたいとか、中棒を高級感ある天然木にしたいとか、女性が持ちやすい軽量にしたいとか、我儘なアイデアをたくさんぶつけてしまって。都度パーツの調達や傘の構造上むずかしいと断られていました(笑)

須藤:機能を保ちながら中棒を天然木にすると言うのは、本当に難題なんです。軽量にするというのも骨の丈夫さを重視すると中々厳しい。むずかしいリクエストばかりでお断りをしていました。

中山:それでも時間の経過と共に、須藤社長がチャレンジ精神を発揮してくださって。長い時間をかけて、天然木の軽量中棒、エレガントな持ち手を実現してくださいました。おそるおそる発注した最初の50本は即完売。その後もリクエストがやまず、一時期300本がお届け待ちとなるヒットアイテムに。須藤社長率いるホワイトローズの皆様のご尽力のおかげで、会社でも誇れる名品傘ができたと思っています。

300本待ちの名品傘ができるまで 300本待ちの名品傘ができるまで
Q3. WHITE ROSEは国内初のビニール傘メーカーですが、創業は享保6年(1721年)です。ビニールがなかった時代から、ビニール傘のメーカーに至る経緯を教えてください。

須藤:初代の商いは、刻みタバコの販売業。湿気ないよう、タバコを包んでいた油紙を素材にした雨ガッパのようなものを、2代目か3代目が江戸時代に考案したのが始まりです。ビニールと傘の第一接点は昭和20年代。大東亜戦争後に進駐軍が持ち込んだテーブルクロスに前社長が着眼し、染料の色移りが絶えなかった当時の綿傘用に、ビニールで傘カバーを作って大ヒットしました。その後、ナイロン傘が普及して傘カバーが売れなくなりますが、ビニールをそのまま帆にしたら完全防水の傘ができるのではないか?と。日本で初めてのビニール傘の誕生です。

中山:第一号のビニール傘は売れたんですか?

須藤:画期的すぎてまったく売れませんでした(笑)
そんななか、1964年に東京オリンピックが開催され、来日した外国人に着目されてニューヨークへ大量輸出するように。ところが5年くらいで、関税が撤廃された大東亜戦争後の台湾に生産を奪われてしまって。ビニール傘が日本で一気に広まったのは1970年代後半、コシノジュンコ、山本寛斉などが登場したニューファッションの時代です。独自性を求めるデザイナーが“他店では買えない傘”としてビニール傘をピックアップし、真っ白のビニール傘を経て、透明、ビビッドな色合いのものが生まれました。地方の若い方が東京土産に、銀座でビニール傘を買って帰るのがブームになったこともありました。

中山:ビニール傘はファッションの世界で昇華されて、全国に広まったんですね。

須藤:そうです。ところがあまりにも普及したことで価格戦争になり、生産は中国へ。国内メーカーが次々なくなり、ホワイトローズ1社が残りました。それから25年は苦しい時代。ビニールでシャワーカーテンや自転車のポンチョを作ってもがき、最終的に傘に戻りました。お墓での読経や街頭演説のために、「透明で丈夫で自分のサイズにあった傘」というオーダーが住職や政治家からポツポツと入り始めていて、徐々に口コミで広がっていったんです。そしてある日、宮内庁から当時の園遊会の傘を作って欲しい、とオーダーが入りました。最初は本当に1本だけのオーダーでしたが、当時普及し始めたインターネットで拡散されていきました。

中山:別注傘のベースとなった一番人気の名品「カテール16」は、“選挙に勝て〜る”から名付けたと仰っていましたね!園遊会で使われてるのも存じています。雨の日の街頭演説や園遊会で傘がひっくり返ってしまっては美しくありませんし、周囲やお姿が見える視覚性も大切ですから、上品な佇まいのホワイトローズの傘はまさにぴったりだと思います。

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Q4. 紆余曲折を経て完成したTHIRD MAGAZINEの傘は、どのようにスタイリングするのがおすすめですか?

中山:THIRD MAGAZINEで出しているホワイトローズの別注傘は全部持っていますが、いつも使っているのは骨を16本から8本に減らし、長さを少し短くすることで軽量化したシンプルなSサイズの傘。女性が扱いやすいようにコンパクトさを追求した逸品なので軽くて持ちやすいですし、透明の帆とベージュのトリミングが主張しすぎず、どんなスタイリングにもフィットします。何度も断られながらやっと完成したバンブーの持ち手は子供の学校行事やパーティなどきちんと感のあるシーンで活躍。女性らしくエレガントなのでクラシックな装いにハマるんです。16本骨のMサイズは少し重さが出てきますが、雨風が強いときは頼もしい1本です。広げたときのヴィジュアルが一番美しいのもこのタイプ。和傘のような重厚感があり、和装との相性も◎。安心感のある大きさで男性へのギフトにもおすすめしています。ホワイトローズの傘はスタイリングを邪魔せず、それでいて佇まいの美しさでどんなスタイルも格上げしてくれるもの。THIRD MAGAZINEのブランドロゴもクリアカラーで刻印して、傘の美しさを壊さないよう気遣いました。

300本待ちの名品傘ができるまで 300本待ちの名品傘ができるまで
Q5. ビニール傘という不思議な縁で巡り会ったお二人。これから挑戦してみたいことは?

須藤:日本人にとって、雨や傘はとても情緒的な意味があって、ドラマやアニメにもよく登場します。女性に傘を差し出すことから恋愛が始まるヒットドラマもありましたし、美智子さまの皇后としての最後の園遊会では大雨になり、天王陛下が美智子さまに傘を差し出して一緒に入られる光景も見られました。お二人の深い慈愛を垣間見れるシーンだと思ってます。古くから物語の重要なキーワードとして登場するように、傘は強いメッセージ性をもった道具です。そこに機能を足しながら、いかに持つ人を主役にできるのかー?雨傘のみならず、現在は放射冷却技術の原理で熱を宇宙に逃す、初めての日傘のクラウドファンディングにも挑戦しています。

中山:いつも何気なく使っている傘ですが、掘り下げていくと奥が深いんだな、というのを、お話ししていると改めて感じます。須藤社長とならもっといろんなことが出来る気がして、商品アイデアを考えるとわくわくしますね。須藤社長にはいつも断られていますが、カラーを取り入れたタイプや子供に向けたより安全な傘などにも挑戦してみたいです。

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×WHITE ROSE

別注アンブレラ
トルコ・オーガニックコットン・シリーズ
  • Point #01
    末長く愛用できる修理可能な設計
    末長く愛用できる修理可能な設計

    壊れにくく設計されていても、傘は壊れるもの。ホワイトローズの傘は永く使っていただくために、“パーツごとに修理できること”を前提に設計されています。

  • Point #01
    安全で丈夫、高い透明性を誇るオレフィン多層フィルム
    安全で丈夫、高い透明性を誇る
    オレフィン多層フィルム

    視界の悪い悪天候の日も360度周囲を確認できる透明度の高さ。濡れてもベタつかず、マイナス20度でも変化しない特殊な多層フィルムを使っています。

  • Point #01
    風と戦わずに受け流す、特許取得の「逆支弁」と折れにくく風を受け流す骨
    風と戦わずに受け流す、
    特許取得の
    「逆支弁」と折れにくく風を受け流す骨

    外からの雨風は傘表面を流れ、内側の溜まった風は抜ける特許取得の「逆支弁」が施されています。さらにしなやかなグラスファイバーやカーボン製の骨で強風に強く、使う人を守ります。

  • THIRD MAGAZINE×WHITE ROSE別注アンブレラ
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中山彩子のホワイトローズ愛を語った
サードのブログも是非お楽しみください。

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  • THIRD MAGAZINE(サードマガジン)

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    (サードマガジン)

    直観やタイミングで出会うのが1stフェーズ
    トレンドや周囲からの評価を気にして見つける2ndフェーズ
    様々なものを知った上で自分にあったものを
    選べるようになるのが3rdフェーズ

    経験豊かな大人の女性が選ぶ自分になじむブランドであり、特別なファッションの楽しみ方ができる場所。それがTHIRD MAGAZINE。公式オンラインストアのほか、完全予約制の光注ぐショールームでは、気になったアイテムを試着することも。ぜひ、ショールームでの特別な体験を楽しんでください。

    THIRD MAGAZINE OFFICIAL ONLINE STORE
    THIRD MAGAZINE SHOWROOM
  • WHITE ROSE(ホワイトローズ)

    WHITE ROSE
    (ホワイトローズ)

    江戸時代から雨具に向き合って300年。老舗雨具メーカーのホワイトローズは、昭和20年代からビニールで傘を作ることに着目。現在までビニール傘のパイオニアとして、「安全であること」「丈夫であること」「長く使い続けられること」という当たり前の機能を愚直に改善・追求してきました。「大切な誰かを守りたい」という想いを込めて、「透明で風に強い」安全性なビニール傘を職人の手で生産し続けています。

50年つづくDNA

メルローズのモノ作りとは

真のモノ作り精神で、真価のある商品を創造し、真のサービスを通じて、真の感動をお届けする。
1973年の創業から50年、メルローズは新しい技術を取り入れながら、変わらぬ「モノ作りのDNA」を継承しています。

  • デザイナーの想いをカタチに
    デザイナーの想いをカタチに

    その服を装った時の高揚感を大切にするデザイナーのインスピレーション、伝えたい想いをどこまで忠実に形にできるか。服を形造るすべてのディテールへの拘りが、デザイナーの描く理想に仕上がるよう、メルローズでは50年間、デザイナーと生産チームが密にコミュニケーションし、作り直しを何度も重ねて1着を完成させています。

  • 伝統技術とテクノロジーの融合
    伝統技術とテクノロジーの融合

    手刷りで何度も色を重ねて仕上げる捺染プリント、熟練の職人が常に機械の調子を見ながら編み立てる吊り編み天竺。手仕事でしか生まれない風合いを大切に、メルローズでは服作りの伝統技法を変わらず採用しながら、機能性素材や環境素材、現代だからこそできる技法を組み入れ、“新旧技術”の融合を意識した服作りをしています。

  • すべての作り手たちとの絆
    すべての作り手たちとの絆

    生地だけでなく、40以上もある服のパーツ、縫製、お届けするパッケージやタグまで。服作りに必要な素材の開発、その生産過程を担うメーカーや工場との絆は、良質な服を作るためには欠かせません。メルローズは関わるすべての人々との絆を尊重し、品質に終わらず、服に宿る「作り手の想い」をお届けできる生産環境を大切にしています。