• WHAT IS AN ELEGANCE
2026.05.13
スタイリスト/ファッションエディター
大草直子さん 【3/3 章】
「時間とロマンを宿す、
ジュエリーのエレガンス」
Text: MIKI SUKA, Photo: MINORU KABURAGI (SIGNO), Hair & Make-Up: MAKI
出版社勤務を経て、スタイリスト/ファッションエディターとして独立してから、30年。大草直子さんは、ファッション誌のスタイリングやエディトリアルという枠を軽やかに越え、ブランドプロデュースやコラボレーション、さらには自身が立ち上げたメディア「AMARC」の運営など、常に時代とともに歩みを進めてきた。どんな場面でも手に取るように伝わってくるのは、ファッションへの尽きない情熱。その一方で、人を包み込むような屈託のない笑顔が、自然と周囲を惹きつける。30周年という節目の今、大草直子さんが見つめる、「装うこと」のその先にあるエレガンスを紐解く。

多彩な輝きの背景にある、物語
紀元前ローマンコインをカスタマイズしたリング。インドで手に入れ、占星術の導きによって身につけるようになったルビー。さらにこの日、大草直子さんがコーディネートのために持参した私物のジュエリーには、ネイティブアメリカンのクラフト感あふれるキーチェーン、オニキス、バロックパール、アクアマリン、トルマリン──と、多彩な輝きに満ちていた。繊細さと情熱。その両方を内包するジュエリーは、彼女の心を潤す“自由な感性の結晶”だ。
「ジュエリーを手にするきっかけは、本当にさまざま。ブランドの背景に惹かれることもあれば、石のパワーやデザインに心が動くこともあるし、娘たちに残したいかどうかも大事な基準になることも。自分を後押ししてくれるものだったり、頑張った自分へのご褒美だったり。ジュエリーって、理由があってもいいし、なくてもいい。だからこそ、自由に選べる楽しさがあります」
「ジュエリーを手にするきっかけは、本当にさまざま。ブランドの背景に惹かれることもあれば、石のパワーやデザインに心が動くこともあるし、娘たちに残したいかどうかも大事な基準になることも。自分を後押ししてくれるものだったり、頑張った自分へのご褒美だったり。ジュエリーって、理由があってもいいし、なくてもいい。だからこそ、自由に選べる楽しさがあります」

時間とともに深まる、
インティメートな存在
インティメートな存在
シーズンごとに目まぐるしく変わっていくファッションのトレンドとは対照的に、ジュエリーは時代を超え時間とともに深まっていく存在だ。長い年月をかけて人の記憶に宿り、半永久的に残るロマンを纏う。数多くのジュエリーに触れてきた大草さんが大切にしているのは、偶然の出会いと、その背景にあるストーリー。
「ファッションよりも、ジュエリーはずっとインティメートなもの。だからこそ、背景を知ったときの感情や、手にした瞬間の感覚を大事にしたいと思っています」
印象的な一点を際立たせる日もあれば、ゴールドとシルバーをあえて重ね、異なる素材や石を自由にレイヤードする日もある。組み合わせ方によって、ジュエリーはまったく異なる表情を見せる。それは、その人の個性そのものを映し出すアイテムだ。
「今は、40センチくらいのネックレスを4本くらい重ねるのが気分。付け方にルールはないんです。そのときの自分の感覚や気分を信じること。それが一番の正解だと思います」
「ファッションよりも、ジュエリーはずっとインティメートなもの。だからこそ、背景を知ったときの感情や、手にした瞬間の感覚を大事にしたいと思っています」
印象的な一点を際立たせる日もあれば、ゴールドとシルバーをあえて重ね、異なる素材や石を自由にレイヤードする日もある。組み合わせ方によって、ジュエリーはまったく異なる表情を見せる。それは、その人の個性そのものを映し出すアイテムだ。
「今は、40センチくらいのネックレスを4本くらい重ねるのが気分。付け方にルールはないんです。そのときの自分の感覚や気分を信じること。それが一番の正解だと思います」

母から受け継いだ、
エレガンスの記憶
エレガンスの記憶
「ジュエリーのエレガンスな付け方のお手本は、母ですね」
そう語る大草さんの記憶にあるのは、いつも大ぶりのパールを身につけていた母の姿。特別な日だけでなく、日常の中で自然に纏っていたというその佇まいが、今も鮮明に残っている。
「30代のときに母からネックレスを譲り受けたのですが、当時の私にはまったく似合わなくて。自分の未熟さと、パールの持つ成熟した雰囲気が釣り合わなかったんです。今でも、もう少し先かなと思うことがあります」
母のネックレスを通して、大草さんは大人の女性の大胆さ、寛容さ、包容力を感じていたのかもしれない。ジュエリーは単なる装飾ではなく、理想の女性像を静かに映し出す存在でもあるのだ。
「初めてのジュエリーは、16歳のクリスマスに父にお願いして買ってもらったティファニーのオープンハート。どうしても欲しくて、ニューヨーク出張の父に頼んだんです」
有機的なフォルムのシルバーが、16歳のアメカジスタイルにマッチしていたと当時を振り返る。手にした時の高揚感は、今もジュエリーやアクセサリー選びの原点として残り続けている。
年齢とともに似合うジュエリーは変わっていく。10代ではまだ馴染まない大粒のパールやゴールドも、時を重ねることで自然に自分のものとなっていくように。ジュエリーとは、人生のフェーズごとに新しい魅力を引き出してくれる魔法のような存在なのだ。
そう語る大草さんの記憶にあるのは、いつも大ぶりのパールを身につけていた母の姿。特別な日だけでなく、日常の中で自然に纏っていたというその佇まいが、今も鮮明に残っている。
「30代のときに母からネックレスを譲り受けたのですが、当時の私にはまったく似合わなくて。自分の未熟さと、パールの持つ成熟した雰囲気が釣り合わなかったんです。今でも、もう少し先かなと思うことがあります」
母のネックレスを通して、大草さんは大人の女性の大胆さ、寛容さ、包容力を感じていたのかもしれない。ジュエリーは単なる装飾ではなく、理想の女性像を静かに映し出す存在でもあるのだ。
「初めてのジュエリーは、16歳のクリスマスに父にお願いして買ってもらったティファニーのオープンハート。どうしても欲しくて、ニューヨーク出張の父に頼んだんです」
有機的なフォルムのシルバーが、16歳のアメカジスタイルにマッチしていたと当時を振り返る。手にした時の高揚感は、今もジュエリーやアクセサリー選びの原点として残り続けている。
年齢とともに似合うジュエリーは変わっていく。10代ではまだ馴染まない大粒のパールやゴールドも、時を重ねることで自然に自分のものとなっていくように。ジュエリーとは、人生のフェーズごとに新しい魅力を引き出してくれる魔法のような存在なのだ。

自分の物語を重ねる、
ジュエリーという表現
ジュエリーという表現
20代の頃、憧れながらも手にできなかったリングが、日本のジュエラー「ボンマジック」のものだった。30代後半になってようやく手に入れた13mmのバロックパールは、そのときの自分だからこそ似合うものだった。そして、最近受け取ったという同ブランドのオーダーリングは、カプリ島で白ワインを楽しむ大草さんの姿からデザイナーが着想を得て制作されたものだ。乾いた空気と潮風、光の温度までも閉じ込めたようなデザインが、静かに輝いている。
「セミオーダーやカスタムのワクワク感も大好き。インドを旅してからは、自分で作る楽しさにも目覚めました。どんな石を選び、どんな形にして、どう届けるか。私はもともと編集者なので、“どう伝えるか”にすごく興味があるんです。手に取った人がどんなストーリーを描くのか、そこまで含めて考えるのが好きです」
大草さんはジュエリー制作を通じて、石という素材の力、そして作り手の技術や伝統、そこに自分自身が描いていくストーリーを重ねていくことに魅力を感じている。
「ジュエリーはもともと、お守りや権力の象徴として使われてきた、とてもパワフルな存在。だから今でも、自分を鼓舞する力が宿っていると感じます。纏うことで人の目を引き、自分を上げてくれる。一方で守られているような安心感もあるんです」
「セミオーダーやカスタムのワクワク感も大好き。インドを旅してからは、自分で作る楽しさにも目覚めました。どんな石を選び、どんな形にして、どう届けるか。私はもともと編集者なので、“どう伝えるか”にすごく興味があるんです。手に取った人がどんなストーリーを描くのか、そこまで含めて考えるのが好きです」
大草さんはジュエリー制作を通じて、石という素材の力、そして作り手の技術や伝統、そこに自分自身が描いていくストーリーを重ねていくことに魅力を感じている。
「ジュエリーはもともと、お守りや権力の象徴として使われてきた、とてもパワフルな存在。だから今でも、自分を鼓舞する力が宿っていると感じます。纏うことで人の目を引き、自分を上げてくれる。一方で守られているような安心感もあるんです」


異なる文化を重ねて、
エレガンスへ
エレガンスへ
この度、マルティニークから発売されるペンダントは、サハラ砂漠のトゥアレグ族によるシルバージュエリー「Adawat’n Tuareg(アダワットゥン トゥアレグ)」とのコラボレーションで生まれたものだ。トゥアレグ族の伝統的な技術と、自身が愛するハートモチーフが融合した新たなかたちだ。
「シルバーって日本ではややカジュアルな印象があるけれど、フランスやイタリアでは、大人の女性がゴールドや貴石とミックスして、とてもエレガントに纏っています」
温かみのあるゴールドと、冷ややかな輝きのシルバー。その両方を重ねることで、色の温度にも絶妙なバランスが生まれる。
「大人になると、どうしても強さや女性らしさが前に出てくる。そこに少し温度を下げるようにシルバーを加えると、ちょうどいいんです。例えばリゾートで、シャツのボタンを少し開けて胸元に覗かせるのも素敵ですよね」
思い出や記憶、そして誰かとのつながりを宿すジュエリー。それは女性である自分を静かに引き立て、ときに背中を押し、自分らしさを確かめさせてくれる存在だ。時代を超えて受け継がれてきたその輝きに、大草さんは自らの物語を重ねながら華やかに年を重ねている。
「シルバーって日本ではややカジュアルな印象があるけれど、フランスやイタリアでは、大人の女性がゴールドや貴石とミックスして、とてもエレガントに纏っています」
温かみのあるゴールドと、冷ややかな輝きのシルバー。その両方を重ねることで、色の温度にも絶妙なバランスが生まれる。
「大人になると、どうしても強さや女性らしさが前に出てくる。そこに少し温度を下げるようにシルバーを加えると、ちょうどいいんです。例えばリゾートで、シャツのボタンを少し開けて胸元に覗かせるのも素敵ですよね」
思い出や記憶、そして誰かとのつながりを宿すジュエリー。それは女性である自分を静かに引き立て、ときに背中を押し、自分らしさを確かめさせてくれる存在だ。時代を超えて受け継がれてきたその輝きに、大草さんは自らの物語を重ねながら華やかに年を重ねている。
スタイリスト、ファッションエディター
大草直子
東京都出身。大学卒業後、婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社。雑誌編集に携わった後、ファッションエディター・スタイリストとして独立。幅広いメディアで活躍し、トークイベントや執筆業でも人気を集める。2019 年にはメディア「AMARC」を立ち上げる。